「照る・山紅葉」??「照る山・紅葉」??
秋の夕日に照る山紅葉
濃いも薄いも数ある中に
松をいろどる楓や蔦は
山のふもとの裾模様
みなさんも良く御存知の、高野辰之作詞、岡野貞一作曲の唱歌「紅葉(もみじ)」です。この曲は、唱歌の中でも最高傑作だと思っております。
さてさて。
この「紅葉」について、実は長年悩んでいた事がありました。冒頭の「秋の夕日に照る山紅葉」は、「照る・山紅葉」なのだろうか、「照る山・紅葉」なのだろうかと。
来年の横浜紫友会合唱団の定期演奏会で、源田俊一郎さん編曲:混声合唱のための唱歌メドレー「ふるさとの四季」をやるのですが、その中にこの「紅葉」が入っています。演奏するからには調べなければなりません。
その前に、なぜこんなに悩まなければならないかといいますと、旋律と歌詞の付き方があまりにも微妙なんですよ。旋律を優先して考えると、「照る山・紅葉」と捉える方がしっくり来ます。しかも、2番の歌詞の同じ部分が「散り浮く紅葉」となっているので、1番と2番の整合性を考えると、こちらが正しいのではないかと思うのです。対して、文として考えると、「照る山・紅葉」というのは単純におかしく、「照る・山紅葉」としか考えられません。ただ、歌の場合、歌詞を曲の都合によって改変したりすることが多いのですよ。だから、単純に文として読んだとき変なことが良くあります。これらの要素が絡み合って、どちらが本当に正しいのか分からなくなってしまっているのでしょう。
今度の休みのときに徹底的に調べてやろうと思っていたら、合唱団の団員、Tさんが完璧に調べてくれました。ウェブ上でも、どちらが正解か分からないような状態になっているので、Tさんの調査結果をここに転載致します。Tさんにはこの場を借りて御礼申し上げます。
-------以下転載--------
出典は「日本童謡辞典」上笙一郎 編 東京堂出版 2005年 です。
1.高野辰之 について
教育者・国文学者 1876~1947
長野県生まれ、号:班山(はんざん)、長野師範卒、東京音楽学校(東京芸大)教授、 文学博士、著書:「日本歌謡史」「日本演劇史」「家庭御伽話」
2.紅葉について
詩もメロディーも非常に美しく、色彩豊かな一幅の絵画を思わせる。高野が故郷の山々や軽井沢近くの碓氷峠に思いを寄せて、『万葉集』のうたを想起しつつ作詞したものだといわれている。『万葉集』巻第八の大伴宿禰書持の詠んだ「あしひきの山の紅葉今夜もか浮かび行くらむ山川の瀬に」などが、それであろうか。また、川に流れる紅葉を錦の織物にたとえた「水の上にも織る錦」という第二連の表現も、『古今和歌集』のなかの秋の歌「龍田川もみじ乱れて流るめり渡らば錦中や絶えなむ」(詠人しらづ)に見られるものである。
その本文中に・・・・
金田一春彦は、その色彩的な美しさとともに、「秋の(三)夕日に(四)、照る(二)山紅葉(五)」のように「奇数、偶数、となっている音の配列が、如何にも日本的で、口調のいいところがいい」(『定本高野辰之』2001年・郷土出版社)と評価している。
-------ここまで--------
ということで、「照る・山紅葉」が正解でした。ちなみに、カエデ科の植物で、山紅葉(ヤマモミジ)という品種があります。つまり固有名詞ということです。
本来は私が調べなければならないところを調べさせてしまい、心より恥じておりますが、知らぬは一時の恥と言うことで、またひとつ勉強させていただきました。
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コメント
数年前、漫画評論家の夏目房之助氏が、ある連載で「照る山、紅葉」で区切ってしまって
呉智英氏に間違いを突っ込まれてましたw
投稿: フローリアンガイアー | 2011/01/05 03:06
はじめまして!!
僕も「紅葉」の歌詞で悩んでいましが、ようやくスッキリしました。
ありがとうございました。
投稿: さいとさと | 2010/12/01 20:47
実は子供の授業参観で、音楽の先生が歌詞の解説中「照る山もみじ」と読み上げ、それがまるで「照山さん」という名字を読むようなイントネーションで、すごく違和感があったのです。
それでいいのか? 本っ当にそれでいいのか!? と疑問が自分の中に膨れあがっていたので、こちらにたどり着きやっと胸のつかえが取れたような気持ちです。子供にはこちらの内容を教えたいと思います。
有り難うございました!!
投稿: ママ | 2010/10/09 18:15